2015年5月18日月曜日

書けと言われてないけど、何か時々思い浮かぶものを発散させたい。

第4幕



---朝。

冒険者達は酒場に集まる。朝食を取る者、夜から酒場で飲み明かした者様々である。
しかし、ここに集まるのは冒険者である。

「それでは皆様、朝の依頼掲示します!!」

---朝の給仕をしていた一人が大声で声を書け掲示板に紙束を貼りつける。
それと当時に冒険者達が掲示板に群がってくるのである。

「警備!!警備!!警備!!!!!!」
「・・・盗賊団とかここらに出てどうするんだよ取るもんねえぞ・・・。」
「頼むその依頼譲ってくれ!!今日もう金ねえんだ!!」
「話のわかるオーク族との交渉!?誰だこんな依頼したやつぁ!?」

・・・様々である。

---そんな中ではあるが"鉄”に位置する冒険者『アマリネ』はまだ酒場には現れていなかった。
彼女がやってきたのは酒場での朝の依頼ラッシュが終わり、依頼を受けた冒険者達が酒場を出て稼ぎに向かう頃である。

---ガチャン
ここ数日、この冒険者は酒場に来るときですら重装備である。変わらずのヘルム、革鎧。鎖帷子とブーツが音を立てる。

「はーい!いらっしゃいませー!」

---そしてそんな冒険者に真っ先に声を掛けるのは給仕の少女である。
髪は銀、長髪ではあるが後ろで束ね、中性的な雰囲気を漂わせている通称『クリ坊』。
名前を『クーリィ』と言う。この酒場では女性冒険者に可愛がられることが多い給仕の少女である。

「昼食ですか?"鉄”様、本日のオススメは良い芋が入っています!揚げて食べるのがオススメですっ!」
「・・・芋か」
「はいっ!」
「・・・チーズは無いのか?」
「またチーズですか?」

---この少女は、アマリネに懐いていた。
直接的に救われたわけではないが、数日前に起こったアマリネとブーカの私闘。
その結果によって遅かれ早かれあの巨獣に買われる運命から救われたと考えていたのである。

「じゃあ揚げ芋とチーズでいいですか?エールはつけますか?」
「・・・甘いのを」
「はーい!ピーチエール入りまーす!!」

---そして、この少年のような少女はもう一つ目的が会った。
『この冒険者と良い仲になってしまおう、そしてあわよくば冒険者の嫁として貰われてしまおう』
突拍子も無い発想かも知れないが彼女なりの考えはあるのである。

『私には女性としての武器が無いからこれ以上の稼ぎは見込めない。』
『ならばこのまま給仕で一生を終えるよりも、稼ぎの良いものに付いて行くことで一生安泰と言わないまでも私の人生というものを作り出せるかもしれない!』

---自分には武器がないと心の中で自笑するクーリィ、彼女には

胸が、無かった。絶望的に。

冒険者とは殺伐とした世界を生きるもの達、憩いの場である酒場や娼館では『包み込まれるような母性』が求められていることが非常に多く、それ故に豊満な女性が好まれる傾向にある。
しかし彼女は・・・
少年のような中性的な見た目、明朗快活で黒いところは少し見え隠れするもののおおよそ素直な性格と、まるでホビットの様に常にちょこまかと酒場を動き回る姿はこの街で最も稼ぐ職業『娼婦』になるためには完全に間逆である。

そして最後に、胸が無いのである。包み込みようが無いのである。
この大事な部分が致命的にまで欠けているので娼婦どころか一部の冒険者からは『女』とも見られないのが現状である。
しかも娼婦への第一歩である『誰かに買われる』なんてことも『少年』と間違えられ『男娼』として買われてい幸という状況である。

クーリィの名娼婦になって客を手玉に取りながらワクワク貢がせライフ計画はこの辺りで完全に折れ、別の人生設計に移行していくのである。

「はーい!揚げ芋とチーズとピーチエール3つ!お待たせしましたー!」
「・・・3つ?」
「はい!"鉄”様!ピーチエールお好きですよね!1つはサービスですっ!」
「もう一つは」

「私 の で す っ ! !」
---そう言ってピーチエールを一口煽るクーリィ。甘い。

「・・・??」

---すなわち、私観点でとってもすごい冒険者にくっついて行って幸せにしてもらおうである。
巨獣を撲殺できるほどの戦闘力であればまず簡単に死ぬことはない、一人にされる確率も低い。
更に"鉄”級であれば依頼にあぶれて貧乏になることもなく、その上この冒険者は『ダンジョン探索』を生業としている、いざとなったらダンジョンで稼げるのである。さらにさらに数日様子を見ていても娼婦の誘惑をすべて突っぱねているくらいにガードが固く、浮気の心配もなさそうだ。

『そしてそこに切り込んでいければ、チャンスはあるっ!!』

---クーリィは心のなかで計画を練っていた、心の底で、悪い笑顔で。
アマリネに『言葉巧みに奢らせたはず』のピーチエールを一気に飲みながら心の中で悪い笑顔で算段をねっていたのである。
もちろん、5分もしない内に店長からげんこつを食らって自分が飲んだ分のピーチエール代は払わされるわけではあるが、げんこつの痛みに涙目になりながらも『大丈夫!私ならできる!!』と根拠の無い自信を持ち始めていたのである。


---そしてクーリィがげんこつをもらってピーチエールの代金を払わされた頃。
別の冒険者による賭博と作戦が進行していくのである。

第4幕 終わり。


(絵:タツハさん)

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